猛禽類の視力は、種類や「何を見分ける能力か」によって違います。そのため、猛禽類全体を「人間の何倍も目がよい」と一つの数字で説明することはできません。
それでも、ハリスホークと過ごしていると「私には見つけられなかったのに、もう気づいている」と驚くことがあります。足に力が入ったと思ったらヤブの中を見つめていて、その後、そこから鳥が飛び出したこともありました。
この記事では、ハリスホークの視覚を調べた研究と、私が飼育中に経験した出来事を分けて紹介します。
猛禽類そのものの意味や特徴は、猛禽類とは?読み方・意味・特徴を解説で紹介しています。
猛禽類の視力は、人間の何倍なのか
「目がよい」という言葉には、細かいものを見分ける力だけでなく、色の違いや、背景とのわずかな明暗差に気づく力など、複数の能力が含まれます。
ハリスホークの研究では、能力によって人間との比較が違う
2018年に発表されたハリスホークの研究では、明暗の縞模様を細かく見分ける能力は、人間と同程度の範囲でした。一方、同じ明るさの赤と緑の縞模様を見分ける能力では、人間より高い結果が報告されています。
ただし、わずかな明暗差を見分ける「コントラスト感度」は、人間より低い結果でした。つまり、どのような対象でも、人間よりよく見えるという意味ではありません。
この研究は少数の個体を対象に、決められた条件で模様を見分けさせたものです。野外で鳥を発見できる距離や、すべてのハリスホークの能力をそのまま示す数値ではありません。
出典:Potierほか(2018)High resolution of colour vision, but low contrast sensitivity in a diurnal raptor
同じ猛禽類でも、見え方は同じではない
2016年の研究では、ハリスホークとトビで、視力や見える範囲に違いがあることが報告されています。ハリスホークの視力はトビよりやや高く、視野はトビのほうが広いという結果でした。
一つの種類の研究結果を、そのままワシ・タカ・ハヤブサ・フクロウすべてに当てはめることはできません。種類ごとの違いを知りたい方は、猛禽類の種類一覧も参考にしてください。
出典:Potierほか(2016)Visual abilities in two raptors with different ecology
私より先に鳥に気づいたハリスホークの体験
足に力が入った先には、ヤブに隠れた鳥がいた
印象に残っているのは、ハリスホークの足に力が入ったと感じたときのことです。視線の先を見ると、ヤブの中をじっと見つめていました。
私もそちらを見たのですが、何がいるのか見つけられませんでした。ところが、その後、見つめていた場所から鳥が飛び出してきたのです。
「私が見つける前から、そこにいることに気づいていたのか」と驚きました。飼育中に、目のよさを強く感じた出来事の一つです。
ただ、葉の隙間から鳥の姿が見えていたのか、動きや音などに気づいたのかまでは分かりません。ヤブの向こうを透かして見ていた、という話ではありません。
電線にいる鳥も、私より先に見つけていた
ヤブの中だけではなく、電線の上にいる鳥にも、私より先に気づいていたことがあります。私がまだ見つけられていない段階で、ハリスホークはそちらに反応していました。
こうした経験はありますが、距離を測ったわけではありません。「何百メートル先まで見えた」と数字で説明することはできないものの、自分とは違うものに注意を向けているのだと感じます。
何かを見つけたときは、目だけでなく足や姿勢にも表れる
私のハリスホークで印象的なのは、対象を見つめるだけでなく、足に力が入り、飛び立とうとする動作が見られることです。私には、いわば「戦闘態勢」に入ったように見えました。
- 一方向をじっと見つめる
- 足に力が入る
- 飛び立とうとする動作を見せる
これは私の個体で観察した反応です。足に力が入ったら必ず獲物を見つけている、という判断基準ではありません。何を見ているのか、周囲に何がいるのかも合わせて考える必要があります。
以前、インコが暴れた際にも、私には餌を狙うような目つきに見えたことがありました。人に慣れている姿と、ほかの鳥へ向ける反応は、同じようには捉えられないと感じた場面です。
こうした反応を見るために、小鳥を近づけたり、わざと動かしたりすることは勧めません。あくまで、飼育中に経験した出来事として紹介しています。
食性については、猛禽類は何を食べる?種類ごとの食べ物とハリスホークの食事の実例で詳しく紹介しています。
姿を見失っても、呼ぶと戻ってきたことがある
フリーフライト中、こちらが姿を見失ったときにも、呼ぶと戻ってきた経験があります。
特に感動したのは、竹ヤブの中から、翼をきれいにたたみながら戻ってきたときです。竹の間を抜けて戻る姿は、今でも印象に残っています。
ただし、これを「遠くからずっと私が見えていた証拠」とは考えていません。呼び声やそれまでの訓練、周囲の状況など、複数の手掛かりが関わっていた可能性があります。どの手掛かりを使っていたかは、この経験だけでは分かりません。
戻ってきた経験があることと、見失っても安全であることは別です。この記事の体験は、呼び戻しやフリーフライトの安全を保証するものではありません。
猛禽類の視力について、よくある疑問
何キロ先の獲物まで見える?
猛禽類全体に共通する距離は、この資料からは示せません。何をどのような条件で見つけるかによって話が変わります。今回紹介した私の体験でも、距離や発見時の条件を測定していないため、見える距離の根拠にはしていません。
人間より先に見つけたのは、視力がよいから?
視覚の能力が関わった可能性はあります。ただ、私とハリスホークが同じ場所に同じ注意を向けていたとは限らず、音などの手掛かりも確認できていません。「先に反応した」という観察と、「視力だけが理由」という説明は分けて考えています。
野外で猛禽類を観察するときは、どこを見ればよい?
遠くの鳥では目の細部を確認するのは難しいため、私は尾の形や飛び方を手掛かりにしています。自信を持って種類を判断できない場面も多く、無理に断定はしていません。観察のポイントは、猛禽類の見分け方|トビ・ノスリの尾・翼・飛び方にまとめています。
ハリスホークの見ている先に、気づかされることがある
猛禽類の目のよさは、「人間の何倍」という一言では説明しきれません。種類や見分ける対象によって、得意なことに違いがあります。
私にとっては、足に入る力や視線の変化のあとに、ヤブから鳥が飛び出した経験が、その面白さを実感した場面でした。目の性能を測ったわけではありませんが、一緒に過ごしているからこそ気づけた反応です。
見つめる先や体の動きに注目すると、普段とは違うハリスホークの一面が見えてきます。

