ハリスホークの訓練は、人や飼育環境に慣れることから始まり、グローブに乗る「据え」、短い距離を移動する練習、合図で戻る練習へと進めます。
大切なのは、飛ばす距離を伸ばすことよりも、鳥が落ち着いて参加できる状態をつくることです。グローブへの移動や輸送箱への出入りを覚えることは、毎日の世話や通院にも役立ちます。
この記事では、ハリスホークの訓練の全体像と、各段階で確認したいポイントを解説します。屋外での飛行や体重・給餌量の調整は、実際の個体を見られる経験者の指導を受けて進めてください。
ハリスホークの訓練で最初に決めたい目標
訓練の目標は、飼育の目的によって変わります。日常の世話に必要な動作と、屋外で飛ばすための訓練を分けて考えましょう。
| 訓練 | 主な目的 |
|---|---|
| 据え | グローブ上で落ち着いて過ごす |
| 据え回し | グローブに乗った状態で移動や周囲の刺激に慣れる |
| ジャンプアップ・短距離の渡り | 止まり場所からグローブなどへ移動する |
| 呼び戻し | 決めた合図に応じて戻る |
| 箱仕込み | 輸送箱への出入りや移動に慣れる |
| フリーフライト | 屋外で係留せずに飛ばし、回収する |
据えや箱仕込みは、掃除・体重測定・通院などにもつながる基礎です。フリーフライトを目指す場合も、まず日常の扱いを安定させましょう。
飼育環境や用品をこれから整える方は、ハリスホークの飼育に必要なものも参考にしてください。
訓練を始める前の準備
迎えた直後は、普段の状態を把握する
新しい場所に来た直後は、訓練を急ぐより、食事や休息の様子を確認することを優先します。
「迎えて何日たったか」だけで開始を決めず、購入先での生活と比べて、食欲や動きに変化がないかを見てください。食べない状態や元気のなさを、単に環境に慣れていないためと決めつけないことも大切です。
購入先から、普段の給餌内容、体重の記録、扱い方、慣れている用品を引き継いでおくと、変化に気づきやすくなります。
道具と場所を確認する
グローブ、パーチ、アンクレット、ジェスなどは、鳥の体格と用途に合ったものを使います。革や紐の傷み、金具の不具合、足まわりの状態を確認してから始めましょう。
室内では、開いた窓や扉、ガラス、回転中の扇風機、火や熱源などにも注意が必要です。人やほかのペットが不意に入らないよう、家族とも共有しておきます。
係留用と飛行時の装備は、同じものをそのまま使えるとは限りません。装着や切り替えは、専門店や指導者から実物で教わってください。
据え|グローブ上を落ち着ける場所にする
据えとは、グローブを着けた手に鷹を乗せて保持することです。
初めは静かな環境で、鳥がグローブや人の動きにどう反応するかを確認します。飼い主側も、腕が揺れたり足場の角度が変わったりしないよう、安定した保持を学びましょう。
目標は、長時間乗せ続けることではありません。鳥が強く嫌がらずに乗り、落ち着いて過ごし、次の動作へ移れることです。
繰り返し飛び出そうとする場合は、保持の仕方、周囲の刺激、装備の違和感などを見直します。「慣れるまで我慢させる」と考えて続けず、負担の少ない段階に戻してください。
片足を上げる、羽繕いをするといった動作だけで判断せず、姿勢や周囲への反応も含めて観察しましょう。
据え回し|移動と周囲の環境に少しずつ慣らす
据え回しでは、グローブに乗った状態で移動し、周囲の景色や音に慣れる経験を積みます。
室内で落ち着いていても、屋外では車、人、自転車、犬などへの反応が変わることがあります。最初から人通りの多い場所へ連れ出す必要はありません。
進める際は、次の点を意識してください。
- 静かな場所から始める
- 初めての刺激を一度に増やさない
- 怖がる対象には無理に近づかない
- 落ち着けなくなったら距離を取る
- 周囲の人が急に触れないよう間隔を確保する
「昨日は平気だったから今日も大丈夫」と決めつけず、その日の反応を見ながら進めましょう。
据え、据え回しまでの過程
オオタカなどは猟期の都合もあり、塒(トヤ)が終わってからの調教になります。タイミング的には、秋に台風がきて、一気に冷え込むタイミングぐらい。毎年10月頃が目安となります。17年猛禽を飼育していて思うのは、野生の本能というか、毎年秋台風のころには塒(トヤ)が終わり、ある程度生えそろってるという現状です。
私の個体でも、場所が変わると呼び戻しの反応が悪くなることがありました。いつもの場所で慣れた練習を繰り返し、反応を確認してから次の段階へ進めていました。ハリスホークだから簡単に戻ると考えず、その日の状態や環境を見て判断することが大切です。
最初は自動販売機の明かりやポール、自動車や自転車に驚きバタつきますが、飼い主が気付いた段階で餌を与え、餌に集中させ、その驚く目標物をやり過ごす必要があります。慣れると気にしなくなるのでそれまで続けましょう。
フリーフライト時に驚いて戻りが悪くなったり、びっくりして飛んでいかないように慣れさせる必要があります。
据えの延長線にある訓練なので、色々なものや音、光に慣れさせるという意味合いがあります。先ほど伝えたように慣れないものに関しては口餌で釣り、意識を餌に集中させましょう。何事もないというのが分かれば怯えたり、驚くことが減っていきます。
ここまでできれば、猛禽たちと一緒に散歩ができるようになります。
据え方のコツ

まだ飼育していない方は500から1リットルのペットボトルをグローブの上に乗せて歩いてみましょう。画像のような形にして、ペットボトルを乗せてあるくだけなのですが、バランスを取るのが難しい。実際は鳥たちも自分でバランスを取るので難しくはないのですが、負担をかけずに据えるという意味で手の形だけでも覚えておきましょう。最初の頃は手のひらが少しずつ上を向いてきてしまいます。鳥たちも面が大きい方が立ちやすく、楽な姿勢になりがちなので注意しましょう。
我が家で室内の据えから屋外の散歩へ進めた過程は、ハリスホークの散歩・据え回し|室内から屋外へ慣らした実体験にまとめています。初めて見る物への反応や、持ち歩いていた道具も紹介しています。
ジャンプアップ・渡り|短い移動を覚える
グローブへの乗り移りが安定したら、止まり場所からグローブへ移動する練習につなげます。跳び上がる動作はジャンプアップ、離れた止まり場所へ飛び移る練習は渡りと呼ばれます。
初めは、鳥が迷わず移動できる近さで取り組みます。距離、高さ、場所を一度に変えず、一つの条件が安定してから次へ進めると、つまずいた理由を把握しやすくなります。
望ましい動作の直後に報酬を与え、その動作を繰り返しやすくする考え方は、猛禽類の訓練でも使われています。詳しくは、鷹匠による解説The Modern Apprentice:Raptor Training Philosophyも参考になります。
給餌を報酬に使う場合は、その分も一日の食事に含めて管理します。反応が悪いからといって、すぐに距離を伸ばしたり、食事を減らしたりしないでください。
歩いて移れる距離から始め、少しずつ距離や高低差を変えた経験は、ハリスホークのジャンプアップ|始め方と呼子の合図で紹介しています。反応が鈍くなったときの切り上げ方や、残りの食事を与える流れもまとめています。
呼び戻し|合図と戻る動作を結びつける
呼び戻しでは、声や笛など、決めた合図に応じて戻ることを練習します。
合図は毎回わかりやすく統一し、戻る場所と、その後に起こることを鳥が理解しやすい形にします。最初から遠くで呼ぶより、成功している短距離の練習の中で合図を使うところから始めましょう。
確認したいのは、一度戻ったかどうかだけではありません。
- 合図を出したときの反応が安定しているか
- 途中で別のものに気を取られないか
- 戻った場所で落ち着けるか
- 場所が変わっても同じように反応できるか
室内で成功したことだけを理由に、屋外でも戻ると判断しないことが重要です。
最初はパーチからぎりぎり届く程度、少しずつ離れて行って、飛んで乗ってくる程度まで離れて行っていきましょう。
これをやる際に、呼び子を使うのであれば笛を鳴らし、声や餌合子を使う場合も音を立てて呼びましょう。そのうち、手に餌がなくても音だけで反応し飛んでくるようになります。
ここで注意したいのは、グローブへ執着し離れない場合が出てきます。グローブ=餌と認識されないよう、ジャンプアップ時はパーチの上に餌を置いたり、グローブの上に餌を置いたりと餌=ご飯という認識を植え込みましょう。
反応が悪いときは、訓練の条件を見直す
呼んでも来ない、グローブに乗りたがらないときは、鳥が「怠けている」と決めつけず、前回と何が違うかを確認しましょう。
| 気になる様子 | 見直すポイント |
|---|---|
| 新しい場所で動かなくなった | 周囲の音・人・動物・見慣れない物 |
| グローブへの移動をためらう | 距離、足場の安定、過去に驚いた経験 |
| 途中から反応が鈍くなった | 練習の長さ、休息、給餌との関係 |
| 普段の食事や動きも変わった | 訓練を中断し、体調について相談する |
難しくした条件を一つ戻す、静かな場所でやり直す、その日は終了するといった調整を行います。
また、体重だけで訓練に適した状態を判断することはできません。「何%減らせば飛ぶ」という一律の数字を目標にせず、食事・体重・行動の記録をもとに指導者へ相談してください。
簡単な訓練記録を残す
記録は、次の項目があれば振り返りに使えます。
- 日付と時間
- 体重と測定条件
- 給餌内容・量
- 訓練した場所と内容
- 合図への反応
- 怖がったものや、前回から変えた条件
「今日は来なかった」だけでなく、状況も残すと相談しやすくなります。
ご飯前に条件をそろえて測定した方法や、体重・餌・運動の記録については、ハリスホークの体重管理|測り方と肉付きの確認、記録の実体験をご覧ください。我が家の体重をほかの個体の目標にするのではなく、その鳥自身の変化を追うための記録として紹介しています。
フリーフライトへ進む前に確認すること
フリーフライトは、係留せずに屋外で飛ばす段階です。呼び戻しができることに加え、場所の安全性、装備、当日の状態、回収の準備まで判断する必要があります。
長い訓練用の紐を使った練習にも、電線や枝への絡まりなどの危険があります。紐を付けていれば安全とは限らないため、扱い方は経験者から直接学びましょう。
屋外では、少なくとも次を確認します。
- 土地や施設の管理者が利用を認めているか
- 道路・電線・建物などとの位置関係
- 人や犬、ほかの鳥の存在
- 風や視界など、当日の環境
- 追跡機器や回収に必要な準備
- 呼び戻しの反応と鳥の状態
追跡機器は、飛ばしても大丈夫と判断する根拠にはなりません。機器があっても回収を保証できないため、初回の実施や新しい場所への移行は、指導者と一緒に判断してください。
ルアー訓練は目的を決めて取り入れる
ルアーは、鳥を誘導するために使う疑似餌などの道具です。グローブ以外の場所へ誘導する練習や、回収手段の一つとして取り入れる場合があります。
ただし、用意しただけで戻ってくるものではありません。鳥がルアーを理解する練習と、飼い主が適切に扱う練習が必要です。
フリーフライト、回収、狩猟では目標が異なります。用途を指導者と共有し、必要な訓練を選びましょう。屋外で飛べるようになったことと、狩猟を行えることも別に考えてください。
箱仕込み|通院や移動に備える
箱仕込みとは、輸送箱に慣れ、出入りや移動を受け入れられるようにする訓練です。
通院が必要になってから初めて箱に入れるより、普段から段階的に慣らしておくと対応しやすくなります。
まずは適した輸送箱を選び、静かな場所で見慣れる機会をつくります。その後、入口に近づく、中に入る、扉が動く、閉まる、箱が移動する、といった変化を分けて進めます。
中に入れたからといって、すぐに長時間閉じ込める必要はありません。鳥の反応を見ながら、受け入れられる範囲を少しずつ広げましょう。
箱内部の構造や係留方法が不適切だと、絡まりや羽の損傷につながります。具体的な配置は、使う箱と個体に合わせて確認してください。
実際に使っている桐箱や、餌を使って箱への抵抗を減らした経験は、ハリスホークの移動・キャリー|桐箱と箱仕込み、車での運搬の実体験にまとめています。床材や車内での固定など、移動時に工夫している点も紹介しています。
ハリスホークの訓練でよくある疑問
何日でフリーフライトができるようになりますか?
一律の日数では判断できません。育ち方、これまでの経験、現在の反応、飼育環境などによって進み方が変わります。
予定した日までに飛ばすことより、各段階で安定してできる動作を増やすことを優先しましょう。
毎日、長時間訓練したほうがよいですか?
長く続けることを目標にする必要はありません。集中や落ち着きが保てる範囲で取り組み、食事と休息を含む生活全体を整えることが大切です。
呼んでも戻らないときは餌を減らせばよいですか?
それだけで判断しないでください。周囲への警戒、練習の難しさ、過去の経験、体調なども見直す必要があります。
急な給餌制限を試す前に、記録を持って購入先や指導者へ相談しましょう。
日々の世話につながる基礎から積み重ねよう
ハリスホークの訓練では、据え、移動、呼び戻し、輸送箱への出入りなど、それぞれの動作を丁寧に積み重ねることが大切です。
進みが遅く感じても、鳥の反応を記録し、うまくいく条件を確認することが次の段階につながります。
これからハリスホークを迎える方は、訓練を教わる先も含めて、ハリスホークの購入先を選ぶ際の確認事項を確認しておきましょう。

