都会でも、鳥の鳴き声や糞害など、害鳥による問題は避けられません。
むしろ都会では、鳩やカラスなどが人間の生活圏に侵入し、巣作りや餌を求めることが増えている結果、こうした被害が増えているという面もあります。
そこで今回は、害鳥対策の一環として注目されている鷹による防除方法についてお話しします。
そもそも害鳥とは?どんな被害が起こる?
害鳥とは、農作物や食品工場、空港などで私たち人間の活動に害をもたらす鳥の総称です。
こうした被害を防ぐために、通常はネットで防鳥対策をしたり、音を使う装置、鳥よけの凧や風船、化学的な忌避剤などさまざまな方法が用いられています。
以下に代表的な害鳥の種類とそれによる被害を挙げます。
スズメ
スズメによる鳥害は一般的な家庭や寺社などでよく見られます。
彼らが集団で巣作りをすることにより、彼らの糞や巣の材料が雨どいを詰まらせて水漏れを引き起こすなど、排泄物による被害が発生することがあります。
また、食品を扱う倉庫や市場、農地などでもスズメの被害が問題となっています。
倉庫や市場などではスズメが食品を食べることも問題ですが、より深刻なのは商品の包装や外箱に糞をされることで出荷できなくなるケースです。
ハト(ドバト、キジバトなど)
ハトは家屋のベランダや窓際、通路などで糞をすることで外観を汚し、建物を劣化させます。
また、ハトの糞は酸性であるため、金属や石材が腐食し、建物の塗装などが損なわれる可能性があります。
また、ハトの糞は病原体を含み、人間がクリプトコッカス症やヒストプラズマ症などの呼吸器疾患に感染するリスクが引き起こす恐れがあります。
その他にも、ハトの巣造りは、排水路を塞ぐなどして水害や換気システムの故障を招くことも。
最後に、農地ではハトが種や果実を食べることにより、農作物に損害を与えることがあるため、経済的な打撃をもたらすこともあります。
カラス
カラスは賢く、適応力が高く、都市部でも見かける鳥です。
そんな彼らは都市部でのゴミ箱を荒らすことがよく知られており、ここにはしっかりとした防護ネットを設置して対策する必要があります。
他にも営巣期には、特にオスが危険から家族を守るために警戒し、巣の周辺に侵入した者には攻撃を仕掛けることもあります。
ちなみに市街地で巣を作る際は高い場所を選ぶ傾向があり、その場所がサイン看板や鉄塔であることがあります。
これにより落下物の危険が生じたり、建物のメンテナンスに支障が出ることも。
また、巣作り以外でも屋上を食事や休憩の場所として使う習性があるため、糞や食べかすなどでの汚染や、排水溝が詰まることもあります。
カモメ(ウミネコ)
ウミネコは漁師が獲った魚を狙って漁港や市場に集まります。
非常に賢いため、魚の水揚げ時にタイミングよく現れ、捨てられた魚だけでなく、販売用の魚にも手を出しがちです。
その結果、彼らの糞や食べ残しが魚に落下することで問題を引き起こします。
またウミネコは通常、人間の手が届かない岩場や島に営巣しますが、都市部の建物の屋上に巣を作るケースも増えています。
これにより、糞害や騒音が周囲の建物に影響を及ぼすことがあります。
ムクドリ
ムクドリは、夜になると数百羽から数千羽、時には1万羽以上に達することもある大きな群れを作り、街路樹などで羽を休めます。
そのため、彼らが集まる場所は鳴き声の他、たくさんの糞による被害も大きくなります。
ツバメ
ツバメの巣作りは多くの場合、春先の風物詩として人々によって歓迎され、見守られています。
ですが、ツバメが巣を作り子育てをするにあたって全く問題が起きないわけではなく、建物の利用者にかかってしまうなど、糞による被害は避けて通れません。
害鳥の「防除」と「駆除」の違いとは?
ここまで害鳥とは何か、その被害内容などについて紹介してきました。
そんな害鳥への対策として行われるのが「防除」と「駆除」ですが、これらは異なる対策手法を指します。
まず「防除」の場合は、基本的に害鳥が人間やその生活圏内で及ぼす損害を未然に防ぐことを目的としています。
なので、たとえばネットやフェンスなどの物理的なバリアや、反射テープ・超音波などの視覚・聴覚などを刺激する装置、生息環境を変化させるなどの方法で、害鳥が近づかないようにするなどの方法が主な対策となります。
対して「駆除」の場合は、既に害を及ぼしてきた害鳥を排除または減少させることを目的としています。
そのため、捕獲や毒餌を用いる、狩猟などで直接的に害鳥の数を減らす行為が対策となります。
駆除は具体的な害鳥の個体を排除することを指すのに対し、防除は害鳥が問題を起こす前にそれを防ぐ手段を言います。
駆除は時に法的制限や倫理的な問題を伴うことがあるため、実行する際には地域の法律やガイドラインに従う必要があります。
基本的に鳥獣保護法により、日本の野鳥は保護されているため、捕獲、駆除ができないと思っていただいて構いません。(狩猟期間中に狩猟が許可されているところであれば、国が指定している狩猟鳥獣の捕獲が認められています)
また、野生生物の保護に配慮しながら害鳥問題を適切に取り扱うことが求められます。
鷹による害鳥防除の流れ
ここからは今回の記事の本題である鷹を用いて害鳥を防除する方法についてみていきましょう。
鷹による害鳥防除とは、主に「ファルコンリー」(鷹匠)として知られる伝統的な狩猟の手法を利用した鳥獣害対策のことを指します。
鷹を利用して害鳥を追い払うことによって、農作物や施設を保護しようというのが目的です。
以下にその一般的な流れを説明します。これらの手順を経ることにより、鷹は害鳥から農地や施設を保護する自然に近い方法での害鳥防除を助けることでしょう。
自然保護や動物愛護の観点からも、鷹を使った方法は比較的受け入れられやすい手法とされています。
ただし、この方法は鷹匠の技術や経験、害鳥の種類や行動パターンによって効果が異なるため、綿密な計画と適切な評価が不可欠です。
事前の準備
まず事前の準備として、鷹が活動するための十分な空間があるか、鷹を防鳥対策として利用することが適切かなどの判断を下します。
また、鷹匠(ファルコナー)が鷹の健康状態及びトレーニング状況をチェックします。
鷹匠(ファルコナー)によるトレーニング
鷹は鷹匠(ファルコナー)によって、特定のエリアで害鳥を追い払うために訓練されます。
上記の内容からも分かる通り、このトレーニングにおいては鷹は害鳥を捕えることよりも、驚かせて飛び立たせるなど被害を未然に防ぐことに焦点を当てた訓練を受けることになります。
害鳥対策の実施
設定された区域に放たれた鷹の飛行により、害鳥がその地域を「危険」と認識するようになります。
こうした鷹の存在感と捕獲行動が害鳥を追い払うのに役立つことになります。
持続的な管理
害鳥を効果的に防除するためには、繰り返し定期的に上記で挙げたプロセスを実施することが重要です。
害鳥が鷹の防除を予測して避けるような展開にならないように、ランダムなパターンで鷹を利用する必要があると言えるでしょう。
モニタリング
持続的な管理と共に、害鳥の行動や数をモニタリングして、タカによる防除の効果を評価する必要もあります。
モニタリングの結果を踏まえ、必要に応じて方法を調整したり、より予防的な手段をとることも大切です。
鷹を用いた害鳥防除のメリット・デメリット
ここまで一般的な鷹による害鳥防除の流れについて見てきました。
どのような対策を取るかは、それぞれの状況やニーズによって異なりますが、適切な対策を検討する際には、鷹を利用するという手法のメリットデメリット双方を考慮に入れる必要があると言えます。
そこでここからは鷹を利用した害鳥防除によるメリットとデメリットについて紹介していきたいと思います。
メリット
鷹を利用した害虫防除には以下のメリットが挙げられます。
- 化学物質や毒などを使わないため、人間や環境に対するリスクが低い
- 鷹を使った防除は自然界の捕食者と獲物の関係を模倣しているため、エコシステムへの影響が少ない
- 鷹の存在は小鳥やその他の害鳥が対象エリアに入るのを防ぐための非常に強い抑止力となる
- 害鳥がそのエリアに戻ってくるのを長期的に防止する効果がある
- 大空を飛ぶ鷹の活動範囲は広く、広範な地域での害鳥対策が可能
デメリット
メリットがある反面、鷹を利用した害虫防除には以下のデメリットが挙げられます。
- 鷹匠(ファルコナー)を雇用し、鷹を訓練、管理、保持するためには相応のコストがかかる
- 鷹は専門的な訓練を要すため、日々の世話や調教に鷹匠の時間と労力が必要となる
- 天候が悪い場合、鷹による駆除活動は制限されるか困難になることもある
- 都市部や民間施設のすぐ隣など、鷹を安全に飛ばすことができない地域がある
- 鷹が害鳥以外の野鳥や保護されている種を捕食するリスクがある
害鳥防除に利用される鷹はどんな鷹?
害鳥防除に使われるのは、主にその俊敏さと獲物を追い払う能力が優れている種類の鷹です。
よく利用される鷹の一例は以下の通りです。
- ハリスホーク:協調性が高く、団体行動をするため、鷹匠との連携で害鳥防除に有効。また、比較的扱いやすいので人気
- ワシタカ類:力強さと大きさで知られており、見た目の威圧感もあり、多くの小型の鳥を効果的に追い払うことが可能
- ハヤブサ:非常に速い速度で飛行できるため、広範囲なエリアで害鳥を追い払うのに適している
上記を始めとした鷹は訓練を受けて鷹匠(ファルコナー)と共に農作物や空港、その他の施設を害鳥から守るのに役立っています。
というのも、害鳥は天敵とも言える鷹のいるその区域を避けるようになることが多いからです。
ただし、安全かつ効果的な害鳥防除のためには鷹による防除を行う際は、鷹がしっかりと訓練されていること、そして鷹匠が適切な知識と経験を有していることが非常に重要です。
まとめ
鷹を用いた害鳥の防除は、薬品や罠を使用せずに行われるため、環境に負荷をかけずに害鳥の問題解決に役立つ方法として注目されています。
しかし、害鳥には帰巣本能が強いものもあり、完全に効果を発揮できない場合もあります。
その際は、専門家のアドバイスを受けながら、鳥害専門のネットを設置するなど物理的な対策を検討する必要があります。
鳥害に悩んでいる場合は、専門家の意見を参考にしながら、状況に応じた最適な対策を選ぶことが重要だと言えるでしょう。