ハリスホークの調教、訓練方法の紹介になります。流派、派閥によってやり方は異なりますので、師匠を持つ場合は一人の話を聞いてしっかりと行いましょう。
結果として、色々混ぜると調教がうまくいかなくなることもあります。1ステップずつ確実に行い、フリーフライトや狩りまで進めていきましょう。
ハリスホークのトレーニング
ペットとして飼育する場合、据えや据え回しまで出来れば問題ありません。ただ、据えも完璧でないのに外へ散歩へ行っても、ただの連れ回しとなってしまいます。
基礎となる据え、据え回しをしっかりできるように行いましょう。
ハリスホークをお迎えしたら1週間ほどは環境に慣らしましょう。人間側も鷹側も飼育をするにあたって環境がガラッと変わります。まずは生活に馴染んでもらいましょう。最初は環境の変化で餌も食べない子もいるぐらいなので、最低1週間は様子を見てください。
パーチでゆっくり休むようになったり、環境に慣れ始めれば餌への食いつきも良くなるでしょう。雛や若鳥を購入した場合は、羽が伸び切ってからの調教がおすすめです。
手乗りとは違いますが、基本的なトレーニングのひとつ、据えが重要となっていきます。
基礎訓練 据え 据え回し
猛禽と過ごすことで必須となる据えや据え回し。掃除をする際に移動したり、日光浴するために移動させたり、全ての移動にグローブはつきもの。
そのグローブが嫌いだったら猛禽たちはどうなるでしょうか?まず乗ることを嫌がりますし、乗せられても落ち着きません。
グローブ上は猛禽たちにとって安心できる場所にしなければ、訓練をするスタート地点にも立てないのです。まずは据えから行いましょう。ハリスホークの場合、社会性があるため2年目以降の調教では必須ではありませんが、日ごろの据え、据え回しがフリーフライトをする際、戻りの良さに繋がってきます。
据え、据え回しまでの過程
オオタカなどは猟期の都合もあり、塒(トヤ)が終わってからの調教になります。タイミング的には、秋に台風がきて、一気に冷え込むタイミングぐらい。毎年10月頃が目安となります。10年猛禽を飼育していて思うのは、野生の本能というか、毎年秋台風のころには塒(トヤ)が終わり、ある程度生えそろってるという現状です。
1年目と仮定して、初めての調教をする場合、行うのは詰め。フルウエイトを把握し、1割程度体重を落とし餌への執着を高めます。犬の調教もそうですが、おやつをダシにして訓練するのと同じです。
ハリスホークの場合、他の猛禽と違いルーズでもフリーフライトできてしまいますが、オオタカなど繁殖期以外ペアを組まない猛禽たちは、しっかりと調教しないと戻りが悪かったり、そのままロストする可能性もあるので注意しましょう。
まずは据え。基本的には新月の夜に明かりのないまま手に据えて(グローブに乗せる)一晩を明かし、信頼関係を築いていきます。ハリスホークの場合、そこまでシビアでないためグローブに乗せて数時間過ごすことを毎日行いましょう。肘掛けのあるイスの上だと楽です。
猛禽がグローブで寝る、片足をあげてリラックスする、そういったところまでできるようにしましょう。まずは家の中で大丈夫です。ここまでできれば、次はベランダや庭で据えて同じことができるように据えを強化してください。
この頃にはグローブ上で餌を食べられる状態になっていると思います。据え回しの際、何かに驚くそぶりがあれば、今後の据え回しの際、驚かないように気をそらすという行為が必要になってきます。
据え回し
据えが完璧にできるようになると、猛禽たちの姿勢も安定し、グローブ上で羽繕いや片足をあげてリラックスする場面も出てきます。
室内から屋外での据えに切り替えましょう。
最初は自動販売機の明かりやポール、自動車や自転車に驚きバタつきますが、飼い主が気付いた段階で餌を与え、餌に集中させ、その驚く目標物をやり過ごす必要があります。慣れると気にしなくなるのでそれまで続けましょう。
フリーフライト時に驚いて戻りが悪くなったり、びっくりして飛んでいかないように慣れさせる必要があります。
据えの延長線にある訓練なので、色々なものや音、光に慣れさせるという意味合いがあります。先ほど伝えたように慣れないものに関しては口餌で釣り、意識を餌に集中させましょう。何事もないというのが分かれば怯えたり、驚くことが減っていきます。
ここまでできれば、猛禽たちと一緒に散歩ができるようになります。
据え方のコツ
まだ飼育していない方は500から1リットルのペットボトルをグローブの上に乗せて歩いてみましょう。画像のような形にして、ペットボトルを乗せてあるくだけなのですが、バランスを取るのが難しい。実際は鳥たちも自分でバランスを取るので難しくはないのですが、負担をかけずに据えるという意味で手の形だけでも覚えておきましょう。最初の頃は手のひらが少しずつ上を向いてきてしまいます。鳥たちも面が大きい方が立ちやすく、楽な姿勢になりがちなので注意しましょう。
ジャンプアップや渡りの訓練
据えができるようになったらチャレンジしてみましょう。据え回しと並行して訓練しても問題ありませんが、注意を逸らすために口餌として与えているので、餌が残る場合や据え回しで驚かなくなってからの訓練で大丈夫です。
パーチとグローブの間で飛ばすという訓練なのですが、まずはパーチからグローブに乗ってご飯を食べるということを覚えさせてください。その際に飛んで乗ってくればジャンプアップの訓練はそう難しくありません。
最初はパーチからぎりぎり届く程度、少しずつ離れて行って、飛んで乗ってくる程度まで離れて行っていきましょう。反応が悪い場合は、詰めの作業が必要になることもあります。
これをやる際に、呼び子を使うのであれば笛を鳴らし、声や餌合子を使う場合も音を立てて呼びましょう。そのうち、手に餌がなくても音だけで反応し飛んでくるようになります。
ここで注意したいのは、グローブへ執着し離れない場合が出てきます。グローブ=餌と認識されないよう、ジャンプアップ時はパーチの上に餌を置いたり、グローブの上に餌を置いたりと餌=ご飯という認識を植え込みましょう。
据えの時に伝えた通り、グローブ上は安心できる止まり木ということを忘れないようにしましょう。グローブ上が狩りやフリーフライトをする際のスタート地点という認識を持ってもらえれば大丈夫です。
これもいつも飼育している場所(室内屋外に関わらず鳥さんのエリア内)から外で出来るように訓練していきましょう。反応が悪いまま続けてしまうと、鳥もサボっていいものだと認識してしまうため注意しましょう。
渡りの訓練
公園や空き地など、開けた土地で行うのが望ましいでしょう。
ヒモを使うため電線がある場所だと上に飛んでしまうと回収できなくなり、感電の危険性もあるので注意が必要です。
まずは手すりや空いている遊具などに止め、少し離れたところから呼び戻す訓練です。
少しずつ距離を離して行き、最終的にヒモを外すところまで訓練できればフリーフライトが可能となります。
ハリスホークのフリーフライト訓練
基礎訓練ができたら次はフリーフライト。鷹を飼育するなら憧れる部分ですよね。
今回はこのフリーフライトの訓練方法を説明していきます。まず基礎訓練がしっかり終わっていることを確認してください。少しでも怪しい部分があれば据えを強化していきましょう。グローブ上でご飯を食べない子は、手に戻りたがらないのでロストに繋がります。しっかりと訓練してから進めていきましょう。
フリーフライト訓練の第一歩は、自宅で構いません。ボウパーチからグローブに飛んでくるようにするところからスタートします。
グローブ上で餌を食べられるようになっていれば、餌がグローブにあれば飛んでくるかもしれません。近距離で少し羽ばたくレベルで構わないので、そこから始めてみましょう。
飛んでくるようになってグローブ上で餌を食べればここはクリア。何度か行い距離を伸ばしていきましょう。
外で呼ぶ際に、名前で呼ぶか、笛で呼ぶか、餌合子で呼ぶか流派や個人のやり方で変わりますが、訓練するときから呼ぶ道具は決めておきましょう。そうでないと鷹自身も呼ばれているのかどうなのか気付かないためです。
実体験でいうと、名前で呼ぶのはいいのですが戻ってこない場合、恥ずかしい思いをするので笛などがおすすめです。
屋外訓練
ここまで完璧に進むことができたら外での訓練になります。1週間程度は同じ場所で行いましょう。長いヒモ(忍縄)を用意し、絡まない距離で行ってください。意外に5mの紐でも真上に飛ばれると電線に引っかかってしまう場合もあり、外での訓練時は注意が必要です。
やり方は、家でやっているようなことを毎日距離を伸ばして行うだけ。最終的なゴール目標は呼んだら確実に来るレベルまで覚えさせること。
次はヒモを外して同じところで行えればフリーフライトができるようになります。無茶は厳禁で、呼んだらしっかり戻ることが大前提です。まだいけるかな?と思って飛ばしていいことはあまりなく、満腹感や環境の変化で一気に戻らなくなるので注意してください。
最悪ロストの原因になります。
ルアー訓練
個人的に必要としていませんでしたが、ロストの大半はグローブが嫌いになる、満腹感で口餌では満足できない、戻ったらリードに繋がられ飛べなくなるという鳥さんの思考です。ルアーの場合、獲物が大きいため狩猟本能があがり、戻る場所はグローブじゃないので、回収をしやすいといったメリットがあります。
ルアーなので、疑似鳥を用意してアタックを仕掛けたら餌が貰える仕組みが良いでしょう。餌を取り付けるタイプが市販で売っているのでそれらを利用するのが確実です。
これも餌を与える時の訓練で、グローブ上からルアーに餌をつけたものを与え、餌として認識させます。その後はパーチ上から、グローブ上からルアーに餌を取りに行けば完璧です。
この訓練をすると、ルアーに使用している鳥の羽に狩猟本能が行くため、フリーフライトを行っている際に鳥を追いかけることがあるので注意してください。
ある程度追いかけて取れないと判断すると狩りを諦めて戻ってきますが、ルアーが取れないという認知をしてしまうとルアーに対する興味が薄れますので注意しましょう。
ルアー訓練のメリットとしては、グローブに戻らなくてもルアーで回収できる場合があること。ロスト対策にもなります。
デメリットは、狩猟本能があがるため、フリーフライトメインで行っている場合、本能のまま野鳥を追いかける場合があります。
フリーフライトは日ごろの訓練の賜物
据えや据え回し、ジャンプアップなど、日ごろの訓練の結果がフリーフライトに繋がります。餌は絶対グローブの上でしかあげない、毎日訓練をする、こういったことが結果へと繋がります。
塒(トヤ)時期はフリーにせず猟期だけ訓練する場合も、訓練が始まったら(詰めから据え~)日々の訓練をしっかり行うことが大切です。
1年目にしっかり訓練をすれば、2年目以降はある程度ショートカットできるようになります。オオタカの場合は少しシビアですが、ハリスホークであれば知能も高いので問題ないでしょう。ただし、悪いこともすぐ覚えるので注意しましょう。
鷹狩り、狩猟のトレーニング
狩りの訓練は活餌をあてて餌として認識させるのが確実でしょう。獲りたい獲物を生きたまま用意してヒモを付け狩らせるのがトレーニング法になります。
実際に狩りに行って獲れるものは、カモやバン、野ウサギなどですが、4つ足の動物をあてるのは難しいのと、覚えさせてしまうと犬や猫にも飛び掛かる危険性があるのであまりおすすめしません。
ちょっと大きな海外産のうずら、ボブホワイトやハト、他の人が獲ったカモやバンなどをあてさせてもらうことが多かったです。この羽でルアーを作り練習させるのが確実です。
フリーフライトと狩りの訓練は紙一重で、餌をとるという目的がグローブ上なのか獲物なのかルアーなのかといった分かれ目でもあります。うまく調教ができ両立できればいいのですが、失敗すると公園などで飛ばして犬や猫に襲い掛かることがあるので慎重に訓練しましょう。
ハリスホークの飛ぶスピードは?
ハリスホークの最大時速は80kmほどと言われていますが、フリーフライト時は獲物を追う必要がないため、通常の飛行速度は20km~30kmぐらいです。
ストゥープ(急降下)した際にでる速度なので、普段は原付きバイクぐらいの速度と思ってもらえるとわかりやすいでしょうか。
高所から急降下をして獲物を狙うときぐらいしかこのスピードは出ないと思ってください。
似た種類ではオオタカやハヤブサ類がいますが、獲物の追い方もスピード感も違うので、狩りに使うならハリスホークよりオオタカやハヤブサが面白いと思います。
ハリスホークが逃げた(脱走) ロスト時の注意点
調教過程でのロストは戻る確率が低くなってきます。もちろん調教が出来上がっていても飼い主の怠慢がロストに繋がります。
ロスト時、ハリスホークの調教がどこまで進んでいるかによって、戻る見込みも含めお伝えします。
基本的に1度でもフリーフライトができていて、グローブが嫌いでなければ翌日同じところに行けば会える可能性があるでしょう。ルアー訓練などを行っていれば、ルアーを振り回して様子を見ても良いかもしれません。
なぜロストに繋がったのか、フリーにしていて何かに追われてしまったとき、肉色がパンパンでお腹がいっぱいになって戻らなかったとき、何かを見つけて追いかけたときなど様々な理由が挙げられます。
リードがついたままロストした場合は、木々や枝にひっかかることもあり、早めに見つけ出したいです。フリーフライト中であれば、他に危害が及ばなければよしとしましょう。探しても見つからない場合は翌朝ロストした場所を探すと良いです。
理由によって戻る確率は変わってくるため、しっかりと基礎訓練を行いロストしないよう対策してください。毎日飛ばしたい気持ちは分かりますが、いなくなったら何もできませんから。
詰めないと戻らないような飼育方法だったとしたら、数日間は戻ってこないかもしれません。日々の訓練を見直しましょう。
ハリスホークの輸送方法
ハリスホークを据え回し以外で、病院や狩りに連れて行く際は、輸送箱を使って車や電車に乗り移動する方法が確実です。この輸送箱にも慣れてもらわないといけないため、調教として「箱仕込み」が必要となります。狭いところに入るのは好きではないため、入っても問題ないと認識させる訓練です。
箱仕込み(輸送箱へ入るトレーニング)
おまけとして、箱仕込み。輸送箱へ入ってもらうためにも訓練が必要です。まずは1日輸送箱を隣に置いておきましょう。
見慣れることが大事です。その後ケージの入り口に餌を置き、ケージの中に餌を置きと繰り返します。
最初は餌をとってもすぐに出てきますが、ふたを閉めずに中で落ち着いて食べれるまで繰り返しましょう。
餌に興味を示さない場合は詰めの作業が必要になります。地道な訓練ですが中で落ち着いてご飯が食べれるようになれば完成。フタを閉じて、外に出た時に餌を与えて、出入りすればご飯がもらえると認識させましょう。
慣れればスムーズに輸送箱の出入りができるようになります。
飛ばす訓練よりは簡単なので、是非覚えさせて輸送を楽にしましょう。
開け閉めの際に飛び出してくることがあるので、リードは必ずどこかに結んでおきましょう。勢いよく飛び出して飛んで行ってしまうとロストの原因となります。